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徒然50%、何か20%、エロ20%、書き(描き)散らし5%、良心5%、所々18禁発言放置に付、ご注意を。
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現在参加中の「創作五枚会」。第二回にアップした作品を、元々のサイズで再録しました。お暇潰しにでもどうぞ。

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*テーマ「手癖」*禁止事項「登場人物の名前禁止」※字数の縛り(原稿用紙五枚)は外しております。LESPAULGIRL SING A SONG アナタの指先が、すごく好き。 アタシの体を隅々までなぞるその繊細な指先が、すごく好き。 ディストーション、フィードバック、濁音のチョーキングにうねる快楽のノイズ。 眩しいステージの上、壊れ物を撫でるように、時には迸る激情をぶつけるように。アタシを自在に歌わせて泣かせる、アナタの「揺らしかた」が、キモチ良くて大好きなの。「うん、イイなお前の声、耳だけじゃなく腰にクる」「ええそうよ、ねえダーリン。もっと愛して、アタシをかき乱して!」 そうねだればアナタは笑って、夜明けまでアタシを弾いてくれる。アナタに抱かれて、アタシは自分の生まれて来た意味を本当に知った気がした。 初めての恋、初めてのオトコ。うぶなアタシはすぐ虜になった。 でも、ギターのアタシがダーリンを夢中にさせられる時間は決して長くない。それを思い知ったのは、一緒に暮らし始めて二度目の夏だった。 ある夜、何の前触れもなく、ダーリンは知らない女を連れ帰ってきた。「ただいま。ほら、新しい友達だぜ」 友達? どういうこと? 目の前で佇む女はアタシより幾分スリムで、意味深に微笑んでいる。例えるなら長い黒髪にブラックレザースーツを着込んだ、ジャガーみたいしなやかな美女。金髪にフリルたっぷりの真っ赤なドレスを纏った、フレンチカンカンの踊り子みたいなアタシとは全然路線の違う、妖しくも魅力的なストラトキャスター。 女は小首を傾げると、バイオレットの唇を挑発的に歪めた。「よろしくね、センパイ」 うわ、すっごいムカつく! セックスアピールなら、アタシのほうが上。このレスポール特有の、くびれたウエストから張り出た腰に繋がるグラマラスなラインは、誰よりも男の眼を惹き付けるって皆が褒めてくれる。ダーリンだってアタシの為に、真っ白なレースのパンティを用意したくらい(さすがにステージでは穿いたことないけれど)。 でもあの女はふん、と鼻先で笑うと、透明感のある澄んだ声でこう言った。「へえ、センパイの声ってイマイチね。大雑把で大味、だからカレに飽きられちゃったんだ」「煩い、新入りのクセに! ダーリンのこと、気安くカレなんて呼ばないでよ、イヤラシイ。ちょっとくらい金切り声がイケてるからって何? パワーなら負けないんだから!」 そう息巻いて睨み付けるけど、あの女は余裕カマして知らん顔で、ダーリンの腕の中に収まってる。 悔しいっ! ねえダーリン、一番はアタシだよね? 今までも、これからも、変わらないよね? そんな想いを込めて必死にダーリンを見つめるけれど、その切れ長の瞳は金色の長い前髪に隠され、捉えることすらかなわなかった。 それからダーリンは、以前ほどアタシに触れなくなった。 時々体をきれいに磨いてくれたけど、それも週に一度から二週に一度、月に一度と延びていった。 ──ねえ、アタシをキライになったの? そう問うことも、弾いてくれなきゃかなわない。ダーリンがあの女ばかり連れ歩くのを見ながら、アタシは心の中で泣いた。 そしてある寒い冬の朝、ついに別れが訪れた。「世話になったな。お前、中々良いギターだったよ。お前に惚れて、大切にしてくれる奴に巡り会うと良いな」 ちょ、何それ? 何だか永遠のお別れみたい。そんな優しい顔で、不安にさせないで、お願い。 そう訴えても、想いは届かない。ダーリンは鼻歌を歌いながらアタシをハードケースに寝かせ、ゆっくりと蓋を閉めた。 再び蓋が開けられると、そこは見慣れぬ楽器屋だった。薄暗い照明の下、壁や床にディスプレイされたギターやベースを見て、アタシは泣きそうになった。(まさか……) 傍らにはダーリンと、丸く黒いサングラスをかけたヒゲの痩せオヤジ、つまり店長がいる。店長はアタシを抱き上げると、ひっくり返したり斜めにしたり、頭からお尻まで食い入るように値踏みしてアンプへ繋いだ。「何よこのエロオヤジ! もう、離してったら!」「うん、状態良いね。これなら五万五千円だな」「マジかよ? コイツ結構レアだぜ。ほら、ブリッジの陰にシリアルナンバー入ってるだろ。このモデルの初期型なんだ」「んー、じゃ六万。それでどう?」「オッケー、さすが店長! 話分かるなあ」 ダーリンは嬉しそうに頷くと、そそくさと手続きして金を受け取り、店を出ていった。 ──たった六万。それが、今のアタシの価値。 売られちゃったんだ、本当に。ダーリンにとってアタシは、所詮楽器でしかなかったんだ。(人間に恋して浮かれて、アタシって何てお馬鹿さんなの) 絶望に塗りつぶされ、倒れそうになる。店長はそんなアタシをカウンターの横に飾り「美品! 特価十二万円」と書かれたポップをぶら下げた。 それから春までの間、アタシは店に来た客達に弾かれた。でも皆ヘタクソで、中には手が汚れてベタベタしてたり、爪すら切ってない最悪なヤツもいた。 ああ弦が錆びる、傷が付く、口臭クサイ、もう最悪! 気分はまるで娼婦。弾かれる度に穢れて行くみたい。そうね、アタシもう新品じゃないんだ。今更大切にしてくれる人なんて、現れるワケがない。「なーんかちょっと掠れたっていうか、レスポールらしい音出ないね、このギター」 アタシを弾いた客は、皆そう眉を寄せる。ヒネた心では、もう以前のように歌えなかった。 捨て鉢な気分で迎えた夏。店長はセールと称し、アタシの値段を二万も下げた。 もう良い、放っておいて。こんなふうに安売りするなら、いっそ廃棄してよ。 そう強がってみるけれど、アタシは内心焦っていた。 これで売れなかったら、あの、一番奥で眠ってばかりいるレスポールのオバアチャンみたいに、アタシも萎びて枯れて行くんだ。(どうしよう……) そんな悲愴な気分になった矢先、見慣れぬ客が現れた。 見るからに若いその客は、茶髪に半袖の白いシャツ、グレーのスラックスという出で立ち。彼は店内をぐるりと見て、最後にアタシの前へ屈んだ。「レスポール、かあ」 近寄りじっと見つめ、そっとネックに触れて来る。その指先はきれいに爪が切られ、さらさらして温かかった。「あのーすいません。これ、弾いても良いっスか?」「うん、どーぞ」 店長は手際良く試奏の準備をすると、アタシを椅子に座った彼へ渡した。 押さえたEマイナーのコードはビビりがちで、ストロークはばらばら。簡単なロックンロールすら、イマイチ決まらない。「……プッ。何よ、ヘタクソね」 彼の指は拙くて、ぎくしゃくして臆病で、テクニシャンなダーリンとは何もかも違う。でもアタシを丁寧に抱く感じは悪くなかった。 そうね、何て言うか。多分、イイ男になる素質はあるみたい。「あ、何かスゲエ、良い感じ」「アンタ、きっとまだ女を知らないのね。でも良いわ。それよりアタシを買えるだけのお金があるの?」 そう囁くと、彼はしばらくアタシを撫でてから、意を決したように顔を上げた。「あの、これ、分割とかでも売って貰えます?」「ん? 分割ねえ……」 店長は少し迷ってから、彼へ問い掛けた。「君、高校生でしょ? 高校生に十万のギターは高いんじゃないの?」「正直、キツイっス。でも、こんなギターを探してたんです。何とかならないっスか?」「うーん……まあ、身分証明と保護者の許可があるなら、良いけど」「マジっすか! あの、明日の放課後、用意して来ます。だからそれまで、絶対誰にも売らないで下さい!」 イヤン、この必死さ、カワイイ! 彼はもどかしげに財布を開くと、たった一枚だけ入っていた千円札を店長へ押し付けた。「あ、いや、前金はちょっと……あー、行っちゃったよ」 慌ただしく去った彼を見送るように、店口の自動ドアがノロノロと閉まる。店長は困ったように頭をかいた後、黄色い小さな紙を手に、アンプに立て掛けられたアタシへ近づいた。「やれやれ、あの高校生、よっぽど欲しいんだろうなあ」 シールドを抜かれ軽く拭かれ、元いた場所へ戻される。それから店長は小さく笑うと、ポップに例の紙を張った。「前金貰っちゃったら他に売れないじゃん、ねえ?」(それって、もしかして……!) そこにはくっきりとした「SOLDOUT」の赤い文字。それは忘れていた甘酸っぱい予感を、アタシの胸に再び呼び起こした。(新しい恋が始まるまで、きっと、あともう少し)【了】お粗末様でした。
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無題 
レスポールちゃんの印象がちょっと変わりますね。専門用語もバリバリなのに、何故だかこっちの方がもっとカワイイ感じですw
どっちのレスポールちゃんにも、おばさんはしっかり感情移入してしまいましたw
やっぱりいいですねー。高校生の彼が現れたところで凄くドキドキします。
作者様が書いていて楽しい話は、読者も読んでいて楽しいから好きです。
素敵なお話、ありがとうございました!
代田さん 2010/11/24(Wed)19:58:43 EDIT
Re:無題
こんな辺境の腐れブログまで来てくださって、ありがとうございます!

レスポールちゃん、気に入って下さって嬉しいです。
こちらの尺が元々の長さなんですが、やはり長いものを短くするってのは中々難しいと実感(笑)
高校生男子、なんかこう言葉だけでもウキウキしますよね!←マテ

好き勝手書いた作品でしたが、それでも楽しんで貰えて何よりです。
コメントありがとうございました!そして、お体のほうもご自愛くださいね。
京元 2010/11/25 (Wed)19:28
無題 
こっちの方が断然いいですね!
ご馳走様でした(*^o^*)
聖騎士 2010/11/23(Tue)14:32:25 EDIT
Re:無題
あっ!

ここまで来てくださって、ありがとうございます!
いやあ、ホントに「五枚」にまとめるのって難しいですね(笑)
次回もドエス設定ですが、聖騎士さんがどんな作品を創られるか楽しみです!
コメントありがとうございました!
京元 2010/11/23 (Tue)15:47
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女性
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貧乏
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作文、音楽鑑賞、楽器演奏
自己紹介:
テレビの背景に映ってる面白いモノを探すのが大好き。
活字好きに加えて重度の音楽中毒。JPOP以外の話題に過剰に反応。
年齢的にイイ大人なので、大人の話も大好き(ニヤリ)

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