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どうも~。

ポケクリさんで、現在プチ更新したりしてます。

バーストリップ2ndの、ある秋の夜の話です。
アキラ店長頑張れな仕上がりになってます。
おヒマにどうぞ↓

in the stiripped 2013



書きたいことはたくさんあるけど、なかなかすすまないというセルフ焦らしプレイに突入しております。
金さえあったら…!!
みたいな苦渋の毎日です(笑)
いまの時代、かなりの日本国民が似たような思いをしてる気もしますが、ホント貧乏ヒマなしやん。
それでもやりたいことは、何とか時間を作ってやる。
ゆっくりでもやる。継続に意義がある、と投げ出しそうな自分に言い聞かせたり。


以前、ここに書き散らした高校生プラトニックな短編の続き的なモノを投げてみます。
これ、そのうちまとめ上げて、ちゃんとした中編くらいにしたいんだがなあ。まだ自分的に方向性を迷ってんのよ。
そのうち削除するかもしれません。ご了承くださいませ。

寒いね。もう雪の季節だよ。




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――無題――


 学校の売店はいつも混んでて、数の限られた調理パンを買おうとすると、中休みに走って行かないと手に入らない。それは結構な争奪戦で、人と競争するのが苦手な僕は日ごろ、弁当を持ってくるか、登校途中で買って来るようにしている。
 でも今日は母が寝坊して、弁当を作って貰えなかった。ついでに僕もバスに乗り遅れて、コンビニに寄る時間がなかった。そんなわけで僕は今、一番前の窓際の席で五百円玉を握りしめて、二時間目が終わるのを今か今かと待ってるわけだ。

「――でー、この時期にぃ、藤原家は戦に勝ちー」

 間延びした教師の声に、二時間目終了のチャイムがかぶった。途端にクラス全員が授業の終了を催促するみたいに、音をたてて教科書やノートを閉じる。僕も皆と同じように、少し乱暴に教科書を閉じて机の中に放り込んだ。

「ここ、一学期の期末に出すから、ちゃーんと復習しとけよー」
「起立、礼!」

 まだ終わりたくない素振りの教師に対し、日直から強引に声がかかる。それを合図に、数人の男子がダッシュで教室を出て行った。朝練のある野球部やサッカー部、陸上部や柔道部の連中だ。そしてその中には多分、秋山も加わっているはず。
 確認するように振り向くとやっぱり、真ん中の一番後ろの席に彼の姿はない。その代わりに、秋山の右隣に座っている成田と目が合った。

「……何?」
「え、いや……何でもない」

 ただ静かに、ストレートに訊かれて、何だかバツが悪かった。
 成田は勉強もスポーツも出来て、しかも学力は学年で五本の指に入る。眼鏡を外すと意外とイケメンで、背も秋山と同じくらい高い。わりに無口だし無愛想なくせに、何故か人気があって、秋山とはまた違う方向で別世界のヒトだ。何度か話したことがあるけど、そのたびに僕の顔をじっと見てくる。それが彼のクセなのかも知れないけど、目線が睨んでるみたいに鋭くて、僕の中の色んなことを見透かされそうで怖い。いや、もしかしたら嫌われてるのかもしれない。僕の思う限り、僕がクラスで一番睨まれてる気がする。
 そんなことより、早く売店に行かなきゃ。じゃないとパンが売り切れて、昼飯はカロリー何とかみたいなモノになっちゃう。僕は慌てて教室を出て、これから売店に向かう女子をかわしながら階段を下りた。

 僕のいる二年一組の教室は二階で、売店は地下一階にある。中央階段を急いで降りて行くと、案の定、売店のショーケースの前はすでに黒山の人だかりだった。しかも前列はほぼ運動部で、一年生らしき坊主頭の群れがパンの買い占めを行っている。少し後ろにはガタイのいい二年や三年らしき先輩が待っていて、種類や数をあれこれ叫んでいた。

「うっ、しまった……今日、焼きそばパンの日か」

 調理パンは日によって種類が決まっていて、中でも焼きそばパンはコロッケパンと一、二を争う人気商品だ。ああ最悪、これじゃどう頑張ったって、僕ごときに買えるわけがない。
 並ぶ努力すら放棄して呆然としていると、人波に弾き出された。そしてそのうちに、売店のおばちゃんが高らかに「パン売り切れ」を宣言した。

「終わった……」

 目の前の人だかりが引き、スカスカになったショーケースに、栄養補助食品のカラフルなパッケージが並べられた。僕みたいな争奪戦の敗者が、疲れた顔をしてそれを買って行く。あんなもので腹がふくれるのは女子の一部だけだ。それでも買わなきゃ、午後は確実に地獄を見る。いつ買うの? 今でしょ、って、さびしく自問自答した矢先だった。

「何ぼーっとしてんだよ、ミチル」
「……秋山」

 気付くと、彼は僕の後ろに仁王立ちして、戦利品の焼きそばパンを持っていた。巻かれたラップ材を器用にはがし、豪快に大きくかぶりついて、はみ出た焼きそばをすする。悔しいけど、口の端についたマヨネーズを指先で拭う仕草すら格好良く見えちゃうなんて、僕もどうかしている。
 あの、パンに挟まった紅ショウガになりたい。いや、唇の端にくっついてるマヨネーズになりたい。秋山の唇に、触れたい――そんな馬鹿なことを考えたのは、僕が朝ご飯すら食べてないからだ。きっとそうだ。
 妄想に流されて遠くへ行きかけた僕を見て、秋山は眉を寄せた。

「大丈夫か? 何だか、目の焦点合ってなさ気だけど」
「あー……大丈夫、大丈夫」
「マジに?」

 秋山が心配そうに顔を近づけて来る。そんなに近づかれたら、どこに視線を向ければ良いんだろう。どうしようもなくなって、秋山の右手にある焼きそばパンを見た。途端に香ばしいソースが匂って来て、思わずお腹が鳴った。

「あ、もしかして、パン買いに来た?」
「うん、まあね」
「ふーん。珍しいな、お前がこの時間に売店来るの。つうか買えて……ないよな」

 秋山は僕が手ぶらなのを見て苦笑いした。そしていきなり、かじりかけの焼きそばパンを僕に差し出した。

「コレで良かったら、食う?」
「……え?」
「ミチル、相当腹減ってんだろ? さっきからガン見してるし。俺、実はもう一個、後輩パワーでゲットしてるから、やるよ」

 ――嘘だろ?
 こんな展開、ありえない。何て言って良いか判らなくなってると、秋山はあっ、と小さく叫んでから、失敗したと顔をしかめた。

「ゴメン。いくら友達だからって、他人の食いかけってイヤだよな。俺、部活のノリで、自分の食ってるモンとかすぐ人に勧めちゃって。ちょ、巧……」
「ま、待って、こっちで良いよ!」

 秋山が後輩を呼び付けようとするのを、僕は慌てて遮った。
 こっちが食べたい。ぜひ食べたい。秋山の食べかけなら風邪引いてたって全然気にしないし、例え僕の嫌いな物でも絶対美味しいに決まってる。お腹が感情を代弁するみたいに、再びぐぅ、と大きく鳴る。いつ貰うの? ってあの先生の声が響いて、今しかないでしょ、って心の中で応えた。

「あの、僕もそういうの、気にしないから。それに、ぶっちゃけ今朝ちゃんと食べてなくって、昼もまだ買ってないから、半分貰えたらマジ助かる」

 出来るだけ、こういうことって日常茶飯事でしょ、って感じを出してみる。本当は他人のかじった物なんてイヤだ。でも秋山のは特別で、食べものだけでなく飲みものや、それこそアメとかガムだって、美味しく食べられる自信がある。でもそこまでやったらただの変態だ。いや、同性を好きになっちゃうあたり、もう既に手遅れだろう。
 笑顔の裏でそんなことを考えていると、秋山が心配そうに眉を寄せた。

「でも、新しいのじゃなくてホントに良いのか?」
「うん。むしろ半分払うから、コッチ売って」
「いや、カネは良いって」
「でも、それじゃあ悪いよ」
「ぜーんぜん。つうか、そんな細かいこと気にすんなよ」
「……ありがと」
 
 小さく告げると、秋山はニカッと笑ってから焼きそばパンをくれた。

「今度、朝飯食いっぱぐれたら俺に言えよ。ついでに買っとくから」
「え、イイの?」
「もちろん。ただし一個しか買えなかった時は、半分こな」
「うん」

 秋山の笑顔に、ドキドキした。
 本当に友達だと思われてるんだ。そして僕は秋山の中で、部活の連中と同じくくらいの位置にいるんだ。それって、ちょっと前までの僕にとって、ものすごい奇跡だ。

「おーい、アキぃ!」
「あ、じゃあ俺、先行くわ」
「うん。じゃあ」

 いつも一緒にいる部活の連中に呼ばれて、秋山が離れて行く。僕はその背中を見ながら嬉しさを噛み締める反面、寂しさを感じた。
 これ以上、僕と秋山の距離が縮まることはないだろう。
 僕の想いを知らせる気はない。むしろ知られてはいけない。絶対引かれる、間違いなく嫌われる。だから友達として近くにいられるだけで良いんだ。
 手にした焼きそばパンに、指の形の凹みがうっすら残っている。あの日焼けしてて、でも意外にきれいな形の指が、このパンに触れていたと思うと何だか緊張した。それを消さないようにしながら、更にラップを剥がした。焼きそばを挟み込むようにパンを押さえながら、これって間接キスだってふと思いついて、パンに残されたキレイな歯型をまじまじとながめた。

「……しっかりしろよ、僕」

 高校生にもなって、間接キスにドキドキするなんて、僕はドーテーですってバラしてるみたいじゃないか。
 そっと周囲を窺って、僕を見ている視線がないことを確認してから、何食わぬ様子で秋山の歯型をかじり取った。

「うあ……」

 お腹がぺこぺこだったせいか、秋山と間接キスしたせいか、唸りたくなるほど美味しい。噛むほどに、柔らかいパンに絡むジューシーな焼きそばと、マヨネーズのコクが口いっぱいに広がって、飲み込んだあとに紅ショウガの辛さが爽やかに残る。ぶっちゃけ今なら二個でも、三個でもペロッとイケる。
 秋山は、どんな風に味わったんだろう。
 たかが焼きそばパンを共有しただけ。そんな些細なことなのに、やたら感動してる自分がいて、つい苦笑いした。だって、秋山は普段からこのパンを食べてるんだ。この美味しさも当たり前のことで、そして時々友達に食べさせることだって、ごく当たり前のことだ。
 ――ああ、そうだよね。
 別に、秋山にとっては特別なことじゃない。そして、友達の分をついでに引き受けることも、数が足りなかったら分けあうことも、彼にとっては普通のことなんだ。
 期待しちゃだめだ。自分が辛くなるだけだから。僕が秋山の特別になることは、決してない。
 ――そろそろ、教室に戻らなきゃ。
 パンを急いで頬ばり、喉の奥にこみ上げてくる塩辛いものを強引に引っ込める。歩きながら最後の欠片を噛み砕いて、大急ぎで飲み込んだ。それから二階まで戻り、教室の手前にある水飲み場に寄った。蛇口を天に向けてコックを捻り、溢れ出た冷たい水を飲む。ついでに顔を洗ってから、尻ポケットを探ってようやく気付いた。
 ハンカチ、忘れて来た。
 とりあえず水を止め、ズボンの各ポケットを指先で探ってみるけど、ティッシュすら入ってない。どうしよう。いっそシャツの裾を引っ張り出して拭こうかと思った矢先、横から紺色のハンカチが差し出された。

「使えば?」

 驚いて顔を上げると、隣に成田がいた。仏頂面で僕を見ている。何て応えて良いのか思い付かないでいると、中休み終了を知らせるチャイムが響いた。すると成田は呆れたように溜息を吐いて、僕の手にハンカチを押し付けた。

「俺、もう一枚あるから」

 それだけ残して、ヤツはさっさと教室に戻って行った。
 一体、どういうつもりなんだろう。ハンカチを強引に貸さなきゃならないくらい、僕は情けなく見えたんだろうか。それとも、もしかして僕が泣きそうになってたのに気付いたんだろうか。
いや多分、大丈夫だ。
 売店ではヤツの姿を見かけていないし、きっと、僕が困ってるところをたまたま見つけただけだ。そしてたまたまハンカチを二枚持ってたから、少しだけ同情してくれたんだ。きっとそうだ。
 自分なりに納得してから、貸してくれたハンカチを広げて顔を拭いた。ちゃんとアイロンがかかってて、ふんわりと石けんの匂いがする。自分のシャツで拭くより遥かに快適だ。ただ、僕がさっぱりした代わりに、ハンカチは色が濃く変わるほど濡れてしまった。これは洗って返さないと、さすがに失礼だろう。
 三時間目を予告するチャイムが響き、廊下に出ていた生徒達が教室に戻り始める。これが鳴り終わったら、通常の場合、五分もしないうちに教師がやってくる。
 僕も急いで戻って、授業の用意しなきゃ。でもその前に、成田にお礼を言った方が良いのかな。それとも明日、ハンカチ返す時で良いのかな。いや待てよ、秋山、ヤツの隣だろ。焼きそばパン美味かったって、先に伝えた方が良いのかも。授業始まる前に、それぞれと話す時間あるかな。しかも、先にどっちへ話し掛けたら良いんだろう――
 濡らしてしまったハンカチをたたみながら、ぐるぐる悩む。教室までのほんの数メートルが、やけに長い気がした。


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